個人事業での建設業許可取得

「個人では許可取得できないと聞いた」と相談されるお客様は少なくありません。建設業許可は、個人事業と法人事業のどちらでも取得することができます。受注できる工事金額に差もありませんので、個人と法人で許可内容が異なることはないと考えて差し支えありません。


 個人事業からの法人設立は、税金対策や事業の規模、取引上法人でなければ参画できない場合など様々な要素で決定すべきですので、建設業許可を取得するためだけに法人を設立する必要は全くありません。むしろ、個人事業で許可を取得した方が、法人での許可取得と比べてメリットになる点もあります。


 財務諸表が比較的簡易になる点など申請のしやすさという点でいくつかのメリットがありますが、最大のメリットは、社会保険(健康保険・厚生年金)の負担を避けられる点です。個人事業は、従業員が5人未満であれば加入義務がありません。例えば、事業主の他に2~3名の職人がおり、必要に応じて一人親方に外注するなどの規模で経営されている場合、労災保険と雇用保険の加入、事業主は国保に加入しているだけで良いのです。建設業許可の要件として「適切な社会保険に加入していること」がありますが、ここでいう社会保険とは、必ずしも健康保険・厚生年金をさすのではなく、法律上加入義務がある保険をいいますので、5人未満の個人事業は労災と雇用保険の加入をしていることで要件を満たします。


 一方、法人の場合は従業員数にかかわらず「健康保険・厚生年金」の加入が義務ですので、社長一人だけの会社でも加入しなければなりません。従業員がいる場合、フルタイムの勤務者は全員加入義務があります。2~3名の職人を雇用している規模でも、社会保険料の負担は決して小さいものではありません。「手取りが少なくなるから社保に入りたくないという社員がいる」というのはよく聞く話ですが、法人の場合は任意に加入を決めることはできないのです。


 では、従業員を一人も雇用していない個人事業の場合どうなるかというと、労災と雇用保険の加入義務もありません。事業主が国保に加入しているだけで要件を満たします。建設業許可の要件に従業員の雇用義務はありませんから、事業主一人だけでも許可を取得することはできます。


 ゆくゆくは法人も考えるかもしれないが、しばらく個人事業でもいいという方は、個人事業での許可取得をおすすめします。なお、これまでは法人化した場合、個人で取得した許可を引継ぐことはできず新規に取得しなおす必要がありましたが、2020年の法改正で個人事業から法人事業への事業承継(事業譲渡)が認められました。事業承継にも県の認可が必要ですので、新規取得に近い書類が必要にはなりますが、許可番号を引き継ぐことができることや、県証紙9万円が不要になるなどたくさんのメリットがあります。この制度については別記事でご紹介します。